さて、仁王さんの解体修理につきましては、後刻、美術院(国宝修理所)工房に出向いて、解体されたお姿に接する機会を得、又、八坂技師より懇切な説明をいただきました。
そこで、今更の如く気づいたことは、仁王さんの背面(横も 含めて)を見る機会など、つゆあり得ないということで、今回修理の機会を得て始めて、背面
を拝むことができました。
お月さんの背中も、人工衛星 が出現するまで、人類の眼に触れることのない聖域でありました。
同様に、仁王さんの背面も、何百年に一度の出逢いであるこ とに気付いて頗る興味を覚えた次第であります。のみならず、人眼に触れることとてない背面
の彫刻は、どちらかといえば、正面の側よりは簡略化に流され易い、ということも当然考えられます。それ故に却ってそこに
特長が見られるという事実も生れて参ります。
そこで、当寺のものが東大寺南大門の仁王像にも通ずるものがあるのではないか、という関係者の方の御意見にヒントを得て、背面
と横面からも両者の比較を私なりに試みたのが、右の写真であります。
もとより片や八・四米、片や、二・三米、一方は 六・一屯、他方は八十五kg、となれば、その大きさ、重さの示す迫力は較ぶべくもありませんが、吽形像の横面
、阿形像の背面を、夫々、 等倍大の写真にしてみていただくことに致します。
この際、まだ調査の緒であり、重要な使用木材の年代調査をふくめて、多くの課題が残されて
いる段階で、素人がとかくの口を挟むことは許されませんの で、説明はここまでに止めさせていただきます。
ともあれ、その美術的価値が、一層評価されることを心より祈っている次第であります。
それでは比較写真をとくと御覧いただきますように。
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